|
重症急性呼吸器症候群
【Sever Acute Respiratory Syndrome】に関する情報。
田村医院 田村 仁
WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(4月7日、更新第23報)
SARS 各国での流行状況
中国
中国保健省は現在、全国の省別の症例数及び死亡例数の最新情報を毎日提供している。4月3日には、新たに2例の死亡を含む合計17例が報告された。以前報告されていたうち2例は除外された。1例の死亡を含む11例が新たに広東省で確認されている。上海から1症例、北京から4症例、そして四川省から1死亡例が報告された。
4 月4日には、新たに12例が報告されたが、死亡例はなかった。11例が広東省、1例は山西省から報告された。4月5日および6日には、新たに21例の症例と2例の死亡例が報告された。現在中国語からの翻訳を行っており、翻訳ができ次第省毎の症例数について報告する。最終的に、中国で報告された総数は1,268症例と53死亡例が報告されている。
中国の政府関係者は、SARSが政府の重要事項になっており、すべての新興感染症や流行を起こす疾病についての、早期の検知と全症例を報告するための警戒および対応のための体制が取られつつある。政府はさらに記者会見を毎日開催し始めた。WHOはこの動きを歓迎している。このことを通じて、一般の人々や医療従事者がこの疾患の特徴や、迅速に医療機関を受診する事の必要性や、隔離および厳密な感染制御の原則に則って患者を管理する必要性などの認識を高めることが出来るのである。
中国のWHO事務所からは、国際労働機関(ILO)の53歳のフィンランド人職員が日曜日に北京で死亡したことにより、当地の外国人社会においてかなり心配の声が起こっていることが報告された。このILO職員は国際会議に出席するために北京に滞在していた。現在のところ、この職員がどのようにしてSARSに罹患したのかはわかっていない。彼は伝播確認地域ではないタイから、北京へ入国している。
香港
香港からはSARSに関して最も多くの新規患者発生の報告があり、いくつかの病院ではかなりの負担になっている。今日の保健省からの報告では、淘大花園(アモイガーデン)住宅団地の住人の間で、268例の患者を出している、今までとは異なった形の集団発生が終息してきていることを示している。環境からの検体の調査が他の省庁の支援のもと精力的に行われている。原因となる病原体が糞便に排泄された事を示唆する情報から、糞便から経口感染した可能性について注目が集まっているが、結論は出ていない。この調査の詳しいデータは今週末までに出されると期待されている。今のところ、空気感染することを示す証拠は見つかっていない。
シンガポール
シンガポールの保健省は、1つの病院の2病棟の医療従事者から29例のSARS「疑い例」という異常な集積を報告した。これらのうち、4例はSARSの「可能性例」であった。これらの集団発生が起きたのは、3月29日であると考えられている。もし患者との接触によって引き起こされたのであれば、同じ日にこのように多く例が発症することは考えにくく、環境からの単一暴露による可能性もあると集団発生の原因を調査している担当者は考えている。
ベトナム
ベトナムでの集団発生は、ハノイのあるフランス系病院で始まった。初発例は香港の貿易会社で働いていた48歳の中国系アメリカ人のビジネスマンであり、2月26日に入院した。症例数は急速に増加したが、3月24日に58症例で落ち着き、その後10日間にわたって患者は報告されていない。SARSの潜伏期が最大10日間であることから、同じ期間患者の報告が無かったことで、感染が制御されたかの希望を抱かせた。しかし、4月3日に1例の「可能性例」が、ある州の病院で確認された。前出のフランス系病院と関係があるかもしれないが、州の病院では隔離や厳格な感染制御がなされていないために、多くの病院関係者、患者および訪問者が暴露した可能性があり、これによりさらに多くの感染者がでる原因ともなることが考えられる。さらに3例の「可能性例」が過去2日間に報告されている。
カナダ
カナダ保健省は、SARSの「可能性例」または「疑い例」の報告を217例受け取っている。これまでに、9例の死亡例があったが、カナダの症例の場合はすべてが、アジアへ旅行したか、家庭内や医療施設でSARS患者との接触を持った人であった。最も大きな集団発生はオンタリオで起きており、87例の「可能性例」と92例の「疑い例」が報告されている。ブリティッシュ・コロンビアでは、3例の「可能性例」と23例の「疑い例」が、ニュー・ブランズウィックでは2例の「疑い例」、サスカチュワンでは1例の「疑い例」が報告されている。アルバータからは5例の「疑い例」、プリンス・エドワード島からは4例の「疑い例」が報告されている。
これらの報告は、今日のWHOの報告の症例累積表に含まれた90例の「可能性例」に該当する。
診断用検査の開発状況
診断検査は11のWHO協力研究施設のネットワークによって、昼夜を問わず研究されているが、考えていたより様々の問題があることが分かった。現在、3種類の検査法が利用可能であるが、SARSの集団発生を迅速に制御する際につかう道具としては、すべての検査に限界がある。
ELISA法の抗体検出は信頼性があるが、症状が現れてから約20日以降のことである。したがって、他人へ感染を広げる機会を持つ以前の初期の段階で、症例を検知することは出来ない。第2の検査法は免疫蛍光抗体法(IFA)であるが、これは感染後10日で抗体を確認でき信頼性もあるが、細胞培養でウイルスの生育の必要があり、検査条件の設定が難しく比較的時間がかかる。現在利用可能なPCR法では、感染の初期の段階ではSARSウイルスの遺伝子産物を検出することが可能であるが、多くの偽陰性が報告されており、本当はウイルスを持っている多くの患者が検出できず、ヒト〜ヒトの密接な接触で容易に感染が広がるとされているウイルスに対して、誤った安心感を与えてしまう可能性がある。
患者情報と感染が報告された国に関する最新報告
今日の時点で、17ヶ国から累積で2,601例のSARS症例と98例の死亡例が報告されている。これは4月5日の前回更新時に比べ、85症例と9死亡例の増加である。死亡例はカナダ(2例)、中国(4例)および香港特別区(3例)
から報告されている。
ベルギーで報告されていた1症例は、一覧から削除された。
日本での状況
我が国における「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の疑い例等の報告状況
(4月9日17時現在)
疑い例
|
報告日 |
件数 |
備 考 |
|
3月25日まで |
7 |
26日に開かれた「SARS対策専門委員会」にてSARSは全例否定された |
|
4月6日まで |
14 |
4月7日に開かれた「SARS対策専門委員会」にてSARSは全例否定された |
|
4月8日まで |
3 |
現在経過観察中、現時点ではSARSの可能性低いと考えられる |
|
4月9日まで |
1 |
症状は軽快、現時点ではSARSの可能性低いと考えられる |
|
計 |
25 |
|
可能性例
|
報告日 |
件数 |
備 考 |
|
3月25日まで |
1 |
26日に開かれた「SARS対策専門委員会」にてSARSは否定された。 |
|
4月6日まで |
5 |
4月7日に開かれた「SARS対策専門委員会」にてSARSは否定された(1例はインフルエンザの確定診断にて、報告が取り下げられた) |
|
4月7日 |
2 |
1例は症状軽快、SARSの可能性低いと考えられる1例は、全身状態は比較的良好 |
|
4月8日 |
1 |
症状は安定しており、経過観察中 |
|
計 |
9 |
|
確定例 なし
(参考)疑い例と可能性例について
|
疑い例 |
|
2002年11月1日(注1)以降に以下の全ての症状を示して受診した患者で |
|
|
・ |
38度以上の急な発熱 |
|
|
・ |
咳、呼吸困難感(注2)などの呼吸器症状 |
|
|
かつ、以下のいずれかを満たす者 |
|
|
・ |
発症前、10日以内に、原因不明の重症急性呼吸器症候群の発生が報告されている地域(WHOが公表したSARSの伝播確認地域)へ旅行した者
|
|
|
・ |
発症前、10日以内に、原因不明の重症急性呼吸器症候群の症例を看護・介護するか、同居しているか、(注3)患者の気道分泌物、体液に触れた者
|
可能性例
疑い例であって、 |
|
|
・ |
胸部レントゲン写真で肺炎、または呼吸窮迫症候群の所見を示す者 |
|
|
または |
|
|
・ |
原因不明の呼吸器疾患で死亡し、剖検により呼吸窮迫症候群の病理学的所見を示した者
|
注1〜3の変更及び注4備考の削除は、WHOの4月1日付け改訂に準じる。
(注1) 2002年11月1日に変更
(注2) 症状から、「息切れ」が削除された。
(注3) 接触状況で「近距離で接触するか」が削除された。
(注4) 備考が削除された。
WHOが公表した「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の伝播確認地域
(4月5日現在)
トロント、シンガポール、広東省、香港、山西省、台湾、ハノイ
(北京、3月31日まで)
(注)WHOが示した「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の伝播確認地域の定義
地域内での限定的な伝播が確認されている旨、WHOに当該国等から公式報告された地域
Back・TopPage |