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先生!『ご先祖の悪行霊のせいでヘイケベンジョウケッセツ{平家鞭状結紮}にされたのでしょうか?』
田村 仁
先日『昔ギャルだった』患者さんが真剣な顔で来院されました。某整形外科のお医者様にいって書いてもらった病気だそうです。「ヘイケベンジョウケッセツ」と確かにカタカナで書いてあります。でもこのような病気は知りませんし、聞いた事もありませんので診察させて頂きました。良く診ると『ヘバーデン結節』と言う上肢の手の指の関節がプックリ腫れて仕舞う病気でした。彼女言い分を良く聞くと、その紙をもって、ある占い師『悪霊封じ師[此の事事態もナンセンスなのですが?]』の所へ相談に行ったそうです。そしたら、『あなたのご先祖様は、源氏で何人もの平家の人々を殺した。その為にその平家の殺された人々の怨霊が取り憑いた。そして、その殺された人々の怨霊の数だけ将来にわたり、指や体中に{平家鞭状結紮・へいけべんじょうけっさつ}と言う腫れ物ができ続ける。それを封じてあげる。此の水晶珠を買いじっと念ずれば{悪霊の怨霊}は成仏して治る。』と言われ、『値段を聞くのは失礼と思い聞きませんでした。』が、『うん十万円』もする、高価なものを買わされたそうです。こう言うのを、『霊感商法』と言います。こんなことをして『お年寄りをだます奴』は『極刑にするべきである。』とわたしは思いました。おばあちゃんが可愛そうなので、『おばあちゃん良かったねー。』と言いながら、『指の関節の側の中にゼリーの様な物が入っている{袋}ができたんだよ。今から少し抜いて診るから。』と言って、注射器で少し中味を抜きました。『ああ楽になった、また抜いてちょうだい。もう腫れないようにしっかりと拝まなくっちゃねー!先生!{私は??、これ以上は立ち入りません。}』『そうだ!この様にして日本の社会は成り立っているのかも知れない。でも?なにかがおかしいかも知れない。これ以上は霊については考えるのをやめよう。』と思い『診療は終了!?』となりました。
それでは『ヘバーデン結節』について勉強して見ましょう。
最新医学辞典:1802年、イギリスのDr William Heberden[ウイリアム・ヘバーデン博士]により記録がされた、指の遠位関節[DIP]『爪に近い方の関節』の裏側に見られる、特有な結節様変形の事を言います。
@原因:変形性関節症による二次的な変化とされています。すなわち関節を作っている軟骨の袋が何らかの原因[例えば使い過ぎや横からの圧力等]で破れるか弱くなり、そこに『袋』ができてその中に『ゼリー状の滑膜液』が溜まってしまう。遺伝子が関与していると言う報告もありますが今の段階でははっきりとした『原因の証明』はなされていません。A中年以降の女性に多く、特に『指を激しく使う職業』の人に多く、女性は男性の10倍。両側に出て、たくさん出来得る可能性はあります。
B症状:最初に痛みで気が付きます。指を動かすのもつらいほどです。ある時期になるとその『痛み』が消えます。痛みが消えるまでは平均半年から1年かかります。病気が進むとそのDIP関節[爪に近い関節]があまり曲がらなくなります。元々此の関節は曲がらなくても不自由のない関節なので、日常生活にはあまり困らないと思いますがしかし、特に『指を使う職業』の人にとっては大変困ります。
レントゲン所見:関節の間が狭くなり、骨の先端が破壊されている。
C治療方法について:指の保温が大切です。血液の循環を良くする事も大切です。
a:西洋医学的な治療方法:消炎鎮痛剤の内服や外用。私は『胃に優しい』、『レリフェン』、『ロキソニン』、『アセトアミノフェンのドライシロップ』等を使っています。
外用剤としては、『イドメシンコーワジェル』、『インテバン軟膏』、『モビラート軟膏』等を1日数回擦り込む様に指導しています。特に痛みのひどい時は『ボルタレン座薬』を使用します。胃が困らないように十二分に配慮して用います。
b:漢方医学的治療法:防已黄耆湯、意苡仁湯、ヨクイニンエキス錠、桂枝加朮附湯、
痛みの強い時には更に『附子』を加えます。
昨今医療費抑制政策を受けて『苛めを受けている我々開業医院』も、『前世の悪霊』に取り憑かれているのかも知れません。今度『水晶玉』を『お玄関』に置いておきましょう。
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