咽頭結膜熱注意報!

田村医院 田村 仁

◆咽頭結膜熱
 咽頭結膜熱の定点当たり報告数は例年より多い状態で推移している。第25週でも更に増加しており、過去10年間のうちでも最大となっている。以前から多かった大分県では減少傾向にあるが、富山県、福井県、三重県、石川県でも定点当たり報告数が1.0を超えている。報告された約8割が5歳以下の小児となっており、特に2〜4 歳児の報告が多かった。 本年、現在までに咽頭結膜熱から分離されている病原体は、アデノウイルス3型、あるいは2型が主である。また、数は少ないものの7型も分離されている。

図. 咽頭結膜熱の週別報告数

 本疾患はプールでの感染も見られることから、プール熱とも呼ばれる。例年、6月頃から徐々に 増加しはじめ、7〜8月にピークを形成する夏季の疾患である。
 感染経路は通常飛沫感染であるが、プールでは結膜からの感染や経口的な感染も考えられて いる。症状としては、5〜7日の潜伏期の後に発熱、頭痛、食欲不振、全身倦怠感、咽頭痛、結 膜充血、眼痛、羞明、流涙、眼脂などの症状があり、それらが3 〜5 日間程度持続する。基本的 には良性のウイルス性疾患であり、脱水を防ぐなどの保存的な治療が中心となる。
 感染予防のためには、患者のタオルなどを共用しないことなどが重要である。発症してから、 眼・呼吸器系では7〜14日間、便からは30日間ウイルスが検出されることもある。
1994年頃からアデノウイルス7型による咽頭結膜熱の流行がみられているが、同ウイルスによる肺炎などの重症例が報告され、問題となった。近年の報告数は多くはないが、依然として検出 がみられているので、引き続き注意が必要である。
 本疾患は今後夏にかけて報告数が増加してくると考えられるので、流行に注意することが必要である。また、プールを介しての流行もあるので、水泳前後のシャワーやプールの水の消毒なども 大切である。
 
アデノウイルス:【英】adenovirus。【独】Adenovirus。【仏】ade´novirus:アデノウイルス科Adenoviridaeのウイルスはカプシド*が正20面体のDNA〔型〕ウイルス*である.ウイルス粒子の直径が約70〜90nmでエンベロープ*はない.カプシドは252個のカプソメアよりなる.20面体の各頂点に位置する12個のカプソメア(ペントン)には先端に小粒子のあるファイバーがついている.カプソメアの内部には塩基性タンパクからなるコアと,それをとりまく分子量20〜23×106ダルトンの複鎖線状DNAがある.ウイルス粒子は細胞の核内で形成され,密に集合して結晶状配列をとる.型によってはウイルス粒子のほかに粒子と異なる物質の結晶状配列をみるものがある.宿主により6亜群に,また赤血球凝集能,抗原性により型別される.ヒトアデノウイルスには40以上の型がある.本来アデノイドより「みなしごウイルス」として分離されたものであり,病原性は強くないが3型,7型は主として咽頭結膜熱*,8型は流行性角結膜炎*の原因となる.新生仔ハムスターに対して12 , 18 , 31型は強い腫瘍原性があり3, 7, 14 , 21型にも弱い腫瘍原性がある.しかし,ヒトに対する腫瘍原性はないものとされている。



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